入局すべきか、せざるべきか
医師になると初期研修があり、研修の2年間が終わると「入局する」「市中病院で後期研修医になるか」のいずれかを選択する方がほとんどです。
入局すべきか、市中病院で働くか。これは多くの若手医師の悩みの種になっているかと思います。
むしろ悩むことが健全です。悩まずに即決すると、私のように後々後悔すると思います。
今日はこの「入局するか」「市中病院で後期研修医になるか」について書こうと思います。私の経験談をもとにお話しするので、偏りがあるかと思いますが、誰かのお役に立てれば幸いです。
まず、「入局する」「市中病院で後期研修医として働く」のそれぞれについて、メリット・デメリットを思いつく限り挙げたいと思います。
入局のメリット
- 働く医療機関が常にある(就職活動の必要がない)
- 多くの医療機関に赴任させられることで経験する症例の偏りを防ぐことができる
- 学位を取りやすい
- 研究できる
- 医局のツテで海外留学・国内留学できる
- 教授になれる(運と実力が備わっていれば)
- 医局のネットワークを通じて多くの医師と知り合える
入局のデメリット
- 自分の意図しない医療機関に赴任させられる
- いずれは退局しなければならない
- 教授の言うことは絶対→カンファレンスで教授の意にそぐわない事は言えない(例え、それが自分が「間違っている」と思っていることで合っても)
- 不平等感を感じることが多い
市中病院で後期研修医になるメリット
- 自分の意図しない医療機関に赴任させられることはない
- 自分の学びたいところで学ながら働ける
- 上級医のツテで違う医療機関で働けるチャンスが来ることあり
市中病院で後期研修医になるデメリット
- 学位は取りにくい
- 研究はしにくい
- 就職活動を考える必要がある
- 限られた医療機関でしか学べない→経験する症例が偏る可能性あり
以上のような感じでしょうか。これを踏まえて、私の意見を述べたいと思います。
結論:
「若い皆さんは、ぜひ市中病院で後期研修医として働くことにチャレンジしてください!」
以下、その理由を述べたいと思います。
まず、医局に属さずに仕事をした方が、より能動的に仕事をできると思います。これはご自身が医療機関を選んで働いているので、当然ですよね。医局の出張先で働くよりも「やらされて仕事をしている」感が出にくいと思います。医局にいるとどうしても「なんで自分はこんなところで仕事をしているんだろう」と思ってしまうんですよね。
また私の周りを見回してみると、医局で大成している人もいますが、あくまで「医局の中」で大成しているに留まっている方がほとんどです。医局に属さず市中病院で働いていた人は、その後「世界的な公衆衛生機関で働くようになった」「海外で臨床医として働けるようになった」「起業した」といった形でバラエティーに富んだ働き方をされています。
もし市中病院で働くのが難しくなったり、医局に興味が出れば、後々医局に入ることもできますしね。多くの医局は、医局のために働いていくれる医師を一人でも多く欲しいので、10年目くらいまでなら入局はそんなに難しくないと思います。
市中病院で能動的に自ら考えながら働くことができるのも若いうちしかできません。常に「自分に何が足りないか。そのためにはどうすれば良いか。」を意識しながら働くことになるかと思います。医局に入れば、ある意味「エスカレーター」に乗るような感じで何も考えずに仕事ができますが、若いうちから楽してしまうよりも、常に能動的に働かれた方が良いかと思います。
ただ、市中病院で働く場合は医局で働くよりも(これは自分が入る組織にもよりますが)、「何が正しくて何が正しくないか」を教えてくれる先生に出会う場面は少ないかと思います。
実際私の知り合いで一人市中病院で働くことを選択した方がいましたが、この方は「何が正しくて何が正しくないか」をご自身で確立されていなかったのでしょう。医師10年を過ぎても依然として医療の中で最も大事である「患者様のこと第一に考える(つまり「患者様のことを第一考えることが正しく、それにそぐわないことは正しくない」)ことがわかっておられなかったため、一緒に働く機会を得た時に、患者様に不利益になるようなことしておりました。
結局はご自身の価値観も影響するとは思います。ただ、一度きりの人生。若い皆さんにはぜひ、ご自身の世界を広げると言う意味でも、市中の病院で働かれることを選択していただきたいと思います。
この記事が誰かのお役に立てれば幸いです。
Ataru Minami